廃校リノベーション特集 第1回「湯ノ里デスク」
少子化、人口減で廃校になる学校が増えて来ています。
かつては、地域の子どもたちが集まり、学び、友達とかけがえのない時間を過ごした場所。子どもだけじゃなく、見守る大人も足を運んだ、思い出深い場所です。
そんな地域の宝物を新たな活動で蘇らせている取組が、北海道内各所で起きています。
クリエイションの力で町に活気を生み出す、廃校リノベーションを取材しました。
ニセコ山麓の蘭越町 旧湯里(ゆのさと)小学校が家具工房に
ニセコエリアの西側、JR昆布駅から車で約5分程の森の中にある湯ノ里デスク。家具づくりのプロ、田代さんと佐々木さんが、2人で営む木工房です。田代さんがデザイン・制作を担当、佐々木さんは家具制作を担当しています。お二人とも東京出身で、東川町にある家具メーカーで一緒に働いていました。田代さんは、東京の本屋さんで働いていた経験があり、その頃から「自分で自分の仕事を作り出したい」「職場と自宅が近い生活ができないか」と考えて、家具職人の道に進みました。飛騨高山で2年程修行をして、東川の家具メーカーに務めたそうです。その頃から、工房を持つなら作業場が確保できる廃校がいいと考えており、東川の家具メーカーはまさに理想的だったとの事。20年以上前に北海道内を探し回ってたどり着いたのが、ここ、蘭越町でした。
「2002年から工房を始めています。もう20年になりますね。近くの昆布小学校の生徒たちが、写生会に来てくれるんです」と廊下に張り出されている子どもたちの絵を見せてくれました。中には、湯ノ里デスクのロゴをきっちり丁寧に描き込んでいる作品も・・・「これは、僕の娘の絵です(笑)」と嬉しそうな田代さん。
二人で工房を立ち上げた理由を聞いてみると、「以前の職場で、特に仲が良かったという訳でもないんです。ただ、佐々木の仕事ぶりはとても信頼していました。一緒にやるなら彼しか居ないと思って、誘いました」。佐々木さんは「デザインは田代のやりたいようにやってもらえれば。僕はひたすら作るだけなんで」と言います。この二人の穏やかで信頼しあっている雰囲気が、工房でのモノづくりにも反映されています。
「湯ノ里デスク、の名前は、学習机を中心に家具を作りたかったからなんです。デスクトップ回りの世界は、自分だけのスモールワールドでしょ?その空間をプロデュースしたいな、と思っています」。子どもでも、大人でも、自分の世界に入り込めるのが机を前にした時かもしれません。湯ノ里デスクの商品は、木の肌を生かして、無着色・無害の植物ベースのオイル塗装で仕上げています。手触りを大事にしているので、いつまでも触っていたくなるものばかりです。
「大きな家具よりも、小物の方がもしかしたら気をつかっているかもしれません(笑)。裏側や細かいところも、小物だと触れるし、見えちゃうでしょ?」と佐々木さん。
廃校を選んだ理由を田代さんは「加工・塗装・展示・保管、を一つ屋根の下で完結させたいと思った時に、学校がいいと思ったんです。古い懐かしい空間で、時間の洗礼を受けた物語性もあって、とても快適です」と語ってくれました。
一つ一つの商品に、愛着を持ってユニークな名前をつけています。本屋さんだった経験もあって、本の家具がとても秀逸!「自立式本立て」は、ニセコのフリーペーパー「powderlife」の設置にも使われています。文庫本を出し入れするのにちょうど良いサイズの「文庫スタジオ」や、大事な本や記念の本を飾る「本のフレーム」など。
最近人気なのは、腕時計スタンド「時間よとまれ」。ギフトで贈る方も多いそうです。新商品のスマートフォンスタンドも見せて頂きました!その名も「Have a wood time」。出かける前にスマートフォンをスタンドから取ると、素敵なメッセージが表れます。一番気になったのは、本棚とコーヒーテーブルがひとつになった「スモールカフェ」。場所も取らないので、窓際に置いて、美味しいコーヒーと読みたい本を並べて、丸一日過ごせそう。パソコンはちょっと離れたいから、下の段に置いて置こうか・・・見ているだけで自分の世界に入り込んでしまいました。
湯ノ里デスク
住所:蘭越町字湯里131
電話:0136-58-2330
営業時間:9:30〜18:00
休日:不定休
料金:時間よとまれ6,300円、自立式本立て6,000円、カードハンガー2,000円、スモールカフェ175,000円※全て税別
HP:http://www.yunosato-desk.com/