年間5万kmを走破する道楽放蕩編集者の北海道釣り行脚 [第1回]利尻島のイワナ

年間5万kmを走破する道楽放蕩編集者の北海道釣り行脚
[第1回]利尻島のイワナと、ウニとソフトクリームにミルピス!

利尻島には大きな川がなく、地図上では川であっても、実際には水が流れていない枯れ沢が多い。生息環境が厳しい渓にはかわいいイワナが力強く生きていた。

 平成元(1989)年、学生時代にアウトドアマガジン「Rise」に参加して以来、海川問わず、ずうっと北海道中を釣り歩いてきた。愛車の走行距離は1年間で5万㎞を超える。燃料代も年間100万円超えの年もあった。きつい。けれど、それ以上に自身の糧になる価値ある出合いがたくさんあり、経験も積めている。その結果がいまの自分なわけで、恵まれていると感謝の気持ちでいっぱいだ。

 実は近年の釣りは個人的に馴染めていない。釣れれば良いだけの風潮は体質に合っていない。つまらないのだ。
 釣れることはもちろん重要なことだけれど、いま思い返すと幼少のころより楽しんできた釣りは魚との出合いはもちろん、それを取り巻く自然環境、そこに生息している野生の生き物、また地元の方々との触れ合いであったり、自分の人生をより豊かにしてくれるきっかけ的な役割が大きかった。釣り歴45年以上の体験の中から、近年のものが中心にはなるが、楽しかった釣り旅のお話を綴っていきたいと思う。

 北海道の周りにはいくつか離島が存在している。奥尻島や天売・焼尻、利尻・礼文島など、それぞれに素晴らしい。渡ったことがないのなら、ぜひとも一度はどこかの離島へ渡ってみてほしい。きっと一度の訪問で、その魅力にはまることだろう。

 昨年の初夏、数年ぶりに利尻島へ渡った。フェリーから眺める利尻富士は碧空に爽やかに映え、今回の釣り旅が楽しいものになると約束してくれているようだ。
 1721mの頂をもつ利尻富士を中心にその裾野が広がっている利尻島。車だと一周53㎞ほど。ゆっくり走って1時間半くらいでひと回りできる。
 今回は旬のウニをいただきながらイワナの顔を拝めればという釣り旅だ。というわけで、まずは腹ごしらえ。目指すはフェリーターミナル2階の食堂でのウニ丼。けっして安くはないが、せっかくなんだ、リッチにいこう。白(ムラサキウニ)ではなく、赤(バフンウニ)を注文。口に運ぶと、絶妙な磯の香りとウニのあんまーい旨みが広がる。たまらない。至福。これだけで来て良かったと思う。
 ターミナル向かいの売店のおばちゃんが呼んでいる。はて、と足を向けるとこれを飲んでみなという。「ミルピス」。知らない。というか、ネーミングが怪しすぎる。口に含むとなんともまろやかで甘酸っぱくて超美味なり。あまりの美味さに3本いっき飲みした!いままで何度も訪れていたが初めてその存在を知った。50年前からあるご当地乳酸飲料らしく、利尻島でしか飲めない幻の飲み物だ!来島の際にはぜひお試しあれ。
 それにしてもミルピス、良い出合いだ。こういったことがあるから釣り旅がやめられない。北海道中を釣り歩き、地元の人々と触れ合い、ご当地の美味しいものを食す。もうこうなってくると本当の目的が何だか分からなくなってくる(笑)。ま、それでもいいか。

 目的の釣り場に着いた。はて? 以前訪れた状況と大きく流れが変わっている。自然の宝庫利尻島といえど、川が護岸されてしまい、そこに生きる生き物たちには厳しい環境条件になってしまっている。  かわいいイワナたちはいるだろうか…?
 護岸されたところより上流の良さげなポイントへ、オリジナルのコーチマンをプレゼントする。が、反応がない。以前はすぐにアタックしてきたのだけれど。
 どうやら数日前に雨で一度水が出て、それが引いて落ち着いた状況のようだ。であれば、浅い流れへ出てきているはずだ。狙いは瀬。落差強く狭い渓なので、瀬自体も長くは続かない。着水させた後の一瞬勝負だ。そしてうまく瀬を流すと、「パシャッ」と水面が割れた。上がってきたのはお腹がオレンジ色に彩られたかわいいイワナだ。写真を撮らせてもらって、急いでリリース。
 なんだかこの1尾で満足だ。もともと厳しい環境だったのに、人為的な操作によってさらに厳しい生活環境を強いられている彼らを不必要にいじめる理由はない。とりあえず顔も見られたし、ロッドをたたもう。それに今回の旅のもう一つの目的があるわけだし。
 ソフトクリームだ。オタトマリ沼の売店に恐ろしく美味いソフトクリームがある!「万年雪ソフト」。いままで各地で数食べてきたソフトクリームの中で間違いなくナンバーワン!超絶美味い!これだけを食べに利尻島へ渡る価値は十分にある。

①稚内よりフェリーに乗り込み、1時間40分ほどの船旅だ。大雪山系以北で最も標高の高い利尻富士が美しい! ②鴛泊港を一望。ペシ岬が美しい。港内も有望な釣り場。大型のクロガシラやホッケが狙える。フェリーターミナル周辺でウニ丼やミルピスを味わえます! ③これがミルピス!50年前から利尻島にて生産されて親しまれている乳酸飲料。味はマイルドで絶妙に美味い!いやー、今回の釣り旅で最も新鮮な出会いはこのミルピスだったなー。 ④オタトマリ沼から利尻富士を眺める。気持ち良い!「白い恋人」のパッケージはここから見た利尻富士とのこと。んー、残念ながら雲が邪魔だ。 ⑤オタトマリ沼の売店にて販売されているソフトクリーム「万年雪ソフト」。ウニもミルピスも美味いが、それらを凌駕したのがこのソフトクリームだった。2回に分けて4本いただいた(笑)。なんだろう、なんだろう、この美味さは! ⑥我が故郷の日高のウニも絶品だが、やはり利尻のウニは超絶品だ。昆布が美味しいところはウニも絶品。何故なら、ウニは昆布を食べて成長するから。これ覚えておいてください、試験に出ますよ!

取材・文・撮影/碧風舎(坂田 潤一)
※当ページに掲載の情報は2017年4月のものです。