年間5万kmを走破する道楽放蕩編集者の北海道釣り行脚 [第2回]朱鞠内湖のイトウ
年間5万kmを走破する道楽放蕩編集者の北海道釣り行脚
[第2回]朱鞠内湖のイトウと、絶景とヒメギフチョウと夜の語らい
北海道広しと言えど、これほど異空間的なロケーションを有している釣り場を他に知らない。超絶景の中で過ごすのは釣り人の特権なのかもしれない。
釣りに夢中になったのは小学校に入学したころから。それが気がつけば進学も水産系、あげく仕事にまでなっていた始末。いやはやなんともだ。釣りにハマった理由は育った環境が最も強いのだが、父親の影響、従兄弟の影響、そして『釣りキチ三平』の影響は絶大だ。その辺りのお話は機会があったら、ということで、40年以上も釣りばかりしていると飽きるというものだが(確かに否めない部分はあるが)、いまだにワクワクドキドキが止まらない釣り(場)もある!
そこには釣りを中心に仲間との集いや美味なる食、また絶景や貴重な野生動物や昆虫との出合いなど濃縮された時を過ごせる空間があるからだ。
絶景に囲まれる朱鞠内湖
幌加内町の朱鞠内地区にある、日本一の湛水面積を誇る朱鞠内湖。ここにはイトウをはじめアメマスや湖沼型のサクラマスなどが生息し、釣り人憧れの釣り場として注目を集めている。というのも、イトウが狙えるのはもちろんのこと、晩春の新緑や秋の紅葉の湖の美しさは言葉には表せないほどで、これだけ北海道中を釣り歩いてきた私でさえ、いまだに足を運ぶたびに心が揺さぶられるほどだ。
朱鞠内湖には冒険がいっぱい!
まだ薄暗い早朝、船外機の排気ガスの匂いがうっすらと広がる湖畔前浜には釣り人が大勢集まっている。みんな渡船を利用して広大なフィールドに散るわけだが、このボートでの移動がまた冒険心をくすぐられてたまらない。それに、一期一会もある。まったく知らない釣り人と乗り合わせることが常で、みんないろいろな意味で緊張しているのが伝わってくる。
凛とした冷たい風と波しぶきが顔を洗う。なんとなく非日常感があって、この後どんな釣りができるのか期待感でいっぱいだ。
複数人、複数組がいる場合はそうではないけれど、単独、もしくは仲間内だけで釣り場へ着くと、ここからは迎えの時間までは貸し切り。悪い言い方をすると置き去りとも…。
この緊張感がまた冒険心をあおる。なんたって、降り立った場所が浮島ではなく対岸ならば野生の楽園なのだから、いるわけだ、陸上動物の頂点にいるあの黒ーいヤツが。写真には収められなかったが一度後ろ姿を拝んだことがある。足跡は数度確認。否が応にも緊張感が高まる。
その中でみんなの狙いは大きなイトウ。実は朱鞠内湖のイトウにはとても大きなロマンが隠されている。湖に流れ込む水系によって太平洋型と日本海型のイトウに分かれているようなのだ。これでピンときた方がいたら、北海道という土地の成り立ちに関する歴史に興味を持っている方とお見受けする。
各自思い思いのポイントで思い思いの方法で狙う。結果は運も実力のうちといったところか。いくらイトウがたくさんいるからといって、そうそう簡単には顔を見せてなんかはくれない。粘って粘って、さらに粘ってもアタリひとつないことだって珍しいことではない。
渡った先で12時間前後過ごすとお迎えがくる。帰りのボートの上では各チームとの釣果報告だ。羨望の釣果を聞くと次こそ!と気合が入る。
メインは夜の語らい
陸に戻ると、急いで湖畔のレークハウスへ移動する。ここ朱鞠内湖での釣りの最大の楽しみと言っても過言ではないのが、これからの時間なのだ!
レークハウスにはさまざまな利用パターンがあるが、われわれは通常の宿泊コースでのんびりと夕食と朝食をとることにしている。なんたって、ここの食事はどこの一流ホテルにも勝るとも劣らず、とっても美味しいのだから。
メインはダッチオーブン料理で食材はすべて地場物。とにかくたまらなく美味しい。お酒も生ビールから日本酒、ウイスキーにワインにカクテルと各種用意されており、宿泊料金もとてもリーズナブルで、連泊すると日ごとに異なる料理が出てくる。もう至れり尽くせり。リピーターが多いのもうなずける。
翌朝も早朝から渡船を利用して釣りをする場合には朝食がお弁当になるが、それもまたピクニック気分満点だ。海外の釣りを体験したことがある方なら、きっとこのスタイルに懐かしさを感じるはずだ。
朱鞠内湖の釣り。絶景の中でイトウの大物が狙え、レークハウスでは最高の食事とサービスを受けられる。もう最高!
※当ページに掲載の内容は2017年11月のものです。
釣り・渡船・宿泊等、お問い合わせはシュマリナイ湖ワールドセンター(TEL.0165-38-2029)まで
取材・文・撮影/碧風舎(坂田 潤一)